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 お世辞にもつるりと滑らかではない、ざらつく壁紙が張り巡らされた畳部屋にも、朝はやって来る。 最近、交換したばかりの蛍光灯の灯りなど敵わないほど、朝の陽射しの束が太くこの畳部屋だけに集中している。 光の束の周りには、細糸がいくつもちりばめられ、真珠色のような輝きを放ちながら部屋の隅々まで満遍なく行き渡っている。白髭をたくわえた神様が宿り、いまにも願いを叶えてくれそうな期待すらある。  眩しさのあまりに目を覚ました僕は、その光を遮りそびれていたカーテンに一瞥をおくり、左手で顔を覆った。 まだ眠気の残る瞼を、一定の法則に従うように緩やかに動かしながら、瞳の奥から視力を呼んでくる。 凛とした陽射しを浴びながら、首を少し右斜めに向け、隣で横になるサヨコに視線を向ける。  
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