狂気に誘われた蝶

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「こうなるって分かってたんでしょ?」 フェリシアーノ君が私の首を絞めながら、なのに私より苦しそうな顔をしてぽつりと呟く。 「さて、何のことでしょうか?」 にやりと笑うと首の締め付けがきつくなる。 「何で?酷いよ―」 彼の呟きに耳を傾けることなどせず、私は記憶の中に潜っていった。 ************* 私がフェリシアーノ君と付き合い始めて分かったこと。 彼はとても嫉妬深い ルートヴィヒさんと話しているだけでも異常なまでに反応する。 『…っなんでみんなと仲良くするの!?菊は俺のものでしょ!?』 そういって怒り出しては殴ったり蹴ったり、そして次の瞬間には泣きながら出来たばかりの傷を手当てする。 そんなおかしな彼を私は堪らなく愛していた。 そして彼の愛をもっと受けたくて、他の方々と一緒にいた。酷いときには身体を重ねることさえあった。 彼を傷つけ自分を傷つけさせる。 これが私たちの愛の形だった。 ************ ぽたり、 「…く?ねぇ聞いてるの?」 頬に落ちてきた雫のせいで現実に引き戻される。 ぽたぽたぼたぼた 彼の涙は止まることなく私の頬に落ちてくる。 「菊、ごめんね」 ごめんね、ほんとうにごめんね 謝罪の言葉を並べながら彼は顔を近付け、私の口を塞ぐ。 ―少し、虐めすぎたでしょうか 彼の唇が離れる気配はない。 薄れていく世界に身を任せ、 私はゆっくりと目を閉じた。
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