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「……ん……?」
良い匂いが漂ってくる
ごそごそ起き上がり、身支度を整えて
キッチンへと向かった
「凄く良い匂い」
「あ……お早う御座います」
挨拶と共に優しい笑顔を貰う
昨日とは打って変わって、明るい
雰囲気を纏っていて、ほっとした
「これ……全部あの冷蔵庫の中身?」
「はい……
御野菜しか入ってなかったので」
テーブルにはトマトスープに
ガーデンサラダとトースト
それに良い香りの紅茶
「ダージリン?」
「はい……
あまり上手く淹れられてなかったら
ごめんなさい」
「貰って良い?」
「どうぞ?」
一口含む
口いっぱいに独特の
マスカットフレーバーが広がる
「凄く美味しい!!」
「良かった」
にこりと笑った彼女
本当に、元気になって欲しいな……
「お二人起こして来ますね?」
「ユチョンは俺が起こすよ」
あいつは一度寝ると、いくら起こしても
起きないからな……
「ユチョン……ユチョン……」
「んー……まだ寝るー……」
「起きろよー」
「……くぅん……」
くぅん……って……
お前は犬か!!
こいつは時々ヴァンパイアらしからぬ
仕草をする
喰らったやつの為に泣くし
こういう所とか……
俺が今まで見て来たヴァンパイアの中で
一番優しい
一度、俺の回復力は種族上、凄く
速いから、そんなに狩りが嫌なら、俺の
血を飲めば?
そんな事を言った事がある
そしたら泣いて嫌がったんだ
「俺に大事な仲間を、噛めって言うのか?」
って……
俺がヴァンパイアになる事を
心配してるんだと思って、肩を
抱きながら、俺はちゃんと浄化出来る
体だから、大丈夫だと伝えたんだ
そしたら、そんな事
言ってるんじゃないって
「仲間と捕食関係になんかなりたくない
そんな事する位なら、一生飢えに
苦しんでも良い」
初めて俺に出来た、仲間なんだ
命に代えても、護りたいって思えたんだ
「俺のこの気持ち、大事にさせて?」
それからは、俺はユチョンが狩りに行く
時間、絶対に見送って、帰って来たら
出迎える事にした
それがユチョンの気持ちに応える事に
なる気がしたから
どんな姿だろうと受け止めてやる
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