櫻井優樹

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彼女はすぐ答える前に、すぐ近くに置いていた黒の絵具を手に取った。 一度も使われていない、新品の絵具だ。 「黒色。本当に使わないんですね」 「なんだ、そんなことか」 別に何かを期待してたわけじゃないが、やはり彼女も同じ。 僕ではなく、"魔法"に興味があるだけの、そこら辺にいる人間というわけだ。 「なんだじゃないですよ。気になるじゃないですか。それとも、"魔法"っていうのは嘘なんですか?」 さすがの僕もこの言葉に少々イラついた。 今すぐ黒の絵具をこいつの顔をつけてやろうと思ったが、それをぐっとこらえる。 「ちょっとそれ貸して」 黒の絵具を返してもらうと、筆先の黒の絵具を少しだけ付けた。 絵にこれをぶつけてしまうと、せっかくの作品が台無しになる。 だから、僕は迷うことなく筆先を床に当てた。
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