櫻井優樹

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それだけの行為だったが、十分だ。 事実、彼女は開いた口がふさがらないと言った感じだ。 「ど、どうなってるの、これ?」 パソコンのお絵描きソフトを、使ったことはあるだろうか? 鉛筆や消しゴム、塗装等の様々なアイコンの中に、一瞬で色を塗るやつがある。 僕の魔法は、まさにそれだ。 床一面に、気味が悪いほどに黒一色に染まっていた。 「僕にも分からないよ」 そう言って、先ほど筆を当てた部分をこする。 この魔法は軽くこすっただけでも消える脆さがあるが、黒に染める範囲はかなり広い。 一度だけ校庭を黒に染めたことはあったけど、それ以上は試す気はなかった。 「さ、これで満足かい?」 やや皮肉めいた口調で、わざと話す。
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