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声を潜めて、けれど諭すように楓は言う。
「飛鳥はこのまま一生、聖くんと何処かに遊びに行かないつもりなの?」
「……別にそこまでは言ってないけど」
「じゃあ言い方を変えるね、――飛鳥は聖くんと遊びに行きたいとか思わないの?」
「え……」
楓の言葉を頭の中で反芻する。
早坂と、何処かに行く?
……二人きりで?
その光景を思い浮かべてみようとするけれど、上手く想像が出来ない。
だって今までの早坂との間柄は、友だちだと言い切るものじゃなかった。
じゃあ何なんだって言及されたら困るんだけども。
知り合い以上、友だち未満。
言い方はちょっと悪いかもしれないけど、私にとってはずっとそんな感じで。
だから急にそんなこと言われたって。
「……よく、分からない」
今の気持ちを素直に言葉にすると。
楓は小さく苦笑いを浮かべた後、肩から手を離した。
「ごめんね、飛鳥の問題なのにちょっと口を挟みすぎちゃった」
首を横に振る。
多分、楓は間違ってない。
それに私のためを思って言ってくれてるのは分かってる。
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