恋人

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教室に戻るなり机に伏した俺の頭上で、大樹のわざとらしい溜息が聞こえる。 「聖、その鬱陶しい空気吐き出すの、いい加減止めろ」 「……鬱陶しいって言うな」 返す言葉にも力が出ない。 大樹はまた溜息をついてやれやれと言わんばかりに俺の前の席に座った。 「で?何をそんなに落ち込んでんだよ」 大方の理由は察してるだろうに、こうやってわざわざ問いかけてくれる。 何だかんだで面倒見がいい親友にこっそり感謝した。 「…………変わらないんだ」 「は?」 「だからっ、変わらなすぎるんだよ!!」 勢いよく顔を上げ、鬱憤を晴らすように拳を机に叩き付ける。 ドン、と思った以上に大きい音が響き、クラスにいたヤツらがこちらを見た。 それに気付いて気まずげに視線を明後日の方向に流せば、すぐに興味を失ったようにそれぞれの話に戻っていく。 それを見計らったみたいに大樹が口を開いた。 「何が変わらないって?」 「……俺と、千倉の関係が」 別に聞かれたって俺は全く構わない。 けれどそういうワケにもいかないから。 若干小さめの声でボソボソと呟く。  
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