恋人

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あの日、千倉は俺の手を取って頷いてくれた。 つまりその瞬間から、俺と千倉は俗に言う『恋人同士』となったワケである。 ――――が、しかし。 あれから約一ヶ月が経つと言うのに、俺達の間に変化らしい変化はなかった。 名前で呼び合うこともなければ。 キスどころか手を繋いだことさえない。 唯一進歩したと思えるのは千倉のメアドと携帯番号を教えてもらったくらいで。 要するに付き合い始めてから恋人っぽいことが何一つ出来ていないのだ。 「クリスマスは?」 「千倉、部活あったんだよ……」 「お正月は、……っと」 「仲良く4人で初詣行ったこと、忘れたとは言わせねぇぞ」 「はいはい、邪魔して悪かったな」 ジロリと恨みがましい視線を送ると。 大樹は素直に非を認め、肩を軽く竦めた。 「でもあれは雨宮から連絡が来たんだから仕方ないだろ」 「…………だよなぁ」 深い溜め息を吐き出し、机に顔を伏せる。 別に本気で怒ってるんじゃない。 すまん、大樹。ただの八つ当たりだ。  
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