恋人

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黙って聞いていた大樹は俺の弱音には触れず、確かめるように言った。 「聖は今の関係が不満なんだな」 「……まあ」 「もっと恋人っぽいことがしたい、と」 「…………そうだよ」 付き合ったからと言って、すぐにイチャイチャできるだなんて思ってない。 ていうか断言してもいい、千倉の性格上、絶対無理だ。 それでも、もう少しだけ。 僅かでもいい、変化が、証拠がほしい。 千倉にとっても俺は他の大多数と同じじゃない、『特別』なのだという証が。 「せめて、他愛ないメールのやりとりとか出来たらなぁ……」 「してないのか?」 「や、だって千倉、無意味なメール嫌いそうじゃん」 「あー、まあな……じゃあ電話とかもしてないのか?」 「そっちのが難易度高いだろ……」 ホントは何度か送ろうかと思った。 電話を掛けてみようかとも思った。 けど、面倒くさがられたり鬱陶しく思われたらって考えると。 「マジへこむもん……」 それこそ、修復不可能なくらいに。 情けなさで沈みそうだ。 俺ってこんなに女々しかったっけ?  
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