22人が本棚に入れています
本棚に追加
『あおい、今どこに居る?』
それは威圧感のある低い声だった。
電話に出た瞬間の相手に浴びせるにはあまりにも配慮がない。
「お父さん? 今、学校終わって帰るところなんだけど」
『だから、どこだ』
父・海斗は少々苛立っているらしかった。
優しい父、そして冷静なボスというイメージが強い海斗が電話の向こうで苛立っている様子は、娘のあおいでも想像し難い。
「まだ教室。SSCに行った方がいいの?」
頭の良いあおいは敢えて冷静に言った。
『いや、羽田空港。羽田に向かってくれ。横浜駅に光がいるから合流しろ』
──光!?
あおいの脳にカッと血が巡る。
「光と?」
『偶々、横浜で任務だったんだ。……あおい、緊急事態だ。桃が攫われた』
「え……?」
最初のコメントを投稿しよう!