―a Bolt from the Blue―

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 あおいは急いで教室を出た。 今日が偶然にも午前授業だったことには感謝する。 だが教室が四階ということに、これほど腹が立つのは初めてだ。 滑りやすい廊下を走り、階段を何度も駆け下りる。  その間、海斗との会話を思い返し、頭の中を出来る限り整理した。 妹・桃が攫われた。 犯人は判らない。  今朝の桃は体調があまり良くなかった。 だから午前中で早退することにしていた。 母の涼香が迎えにいく予定だったのだが、どうやら仕事でどうしても抜けられなくなったらしい。 家と学校はそんなに離れていないし、何時もより明るい時間だから安心、否、油断していた。 まさか、誘拐だなんて誰も、少しも考えなかった。  帰宅したら電話をするように、と言ったのに電話がなくて心配になった涼香が、隠し持たせていた携帯電話のGPSで居場所を突き止め、誘拐が発覚した。 桃は羽田空港へ向かっていたのだ。  (早退って言ったってただの下校。なのにどうして?)
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