―a Bolt from the Blue―

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 桃が誘拐されるのは初めてだ。  桃は今年で中学3年生になるが、自分の家がSSCという大きな組織であること、あおいがスパイという仕事をしていることを全く知らない。 お父さんはよく働くサラリーマンで、お母さんは近所のパソコン教室でアルバイト、お姉ちゃんは頭は良いけど毎日帰ってくるのが遅いハンパな悪ガキだと思っている。  単なる誘拐なのか、それともSSCを強請る(ゆする)ための人質なのか。  あおいは先ほどの海斗の声を思い出した。 あれはボスじゃない。 お父さんの方だった。  兎に角、あおいは羽田空港に行かなくてはならない。  空港に向かっているということは、飛行機に乗ると考えるのが自然。 そうなると携帯電話の存在がバレてしまう。 GPSがなくなれば飛行機を降りて以降、桃の足取りを追うことが困難になる。  中学へ携帯を持って行くことは禁止されている。 だが自分達の仕事柄、心配で仕方ない涼香は、最新の薄型携帯電話をベタに、ジャンパースカートのベルト部分に隠し持たせていた。 誘拐犯がそれに気付かなかったのは、相手がその程度の奴ということなのか。 それとも確認を怠ってしまう理由が何かあったのか、わざと気付かないフリをしているのか。  こうなってくると、もう誰も信用出来なくなる。 あらゆる可能性を視野に入れるべきなのだ。
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