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あおいの通う高校は横浜駅に近かったが、バスを利用する。
しかし都合良くバスが来るはずもない。
少々目立ってしまうが、緊急事態だ。
あおいはタクシーを呼んだ。
お金は後で請求しよう。
会社か、父に。
タクシーの中、あおいは黙って外に視線を投げていた。
車窓から見る外の景色は、まあただの道路だが、春の雰囲気があった。
今日はよく晴れている。
こんな日にはのんびりお花見が似合うのに。
胸騒ぎが鎮まらない。
久し振りに光に会うことになる。
中2の夏以来だ。
そのドキドキも手伝ってか、心臓が煩かった。
桃を誘拐した相手のことを考えていると、あっと言う間に横浜駅に着いた。
携帯を開く。
自分好みの、女子高生らしい可愛い待ち受け。
電話帳を開く。
中学の友達のグループにカモフラージュされたBlack・Angelのメンバーの電話番号とメールアドレス。
その中に『海堂 光』を見付けると手が震えだした。
こんな再会を誰が望んだか。
あおいは歯を食いしばり、光に電話を掛けようと、決定ボタンを押しかけた。
丁度、その瞬間だ。
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