痴漢

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やってよかった。 これで変われるのかな。 僕は心の中で小さくガッツポーズをした。 「○○駅ー、次は○○駅です」 アナウンスが流れる。 あ、僕の降りる駅だ。 駅に着きホームに降りると、後ろから若いお兄さんがおじさんを引き摺りながら交番に連れて行った。 そのときのおじさんは腰を抜かしたのかへたりこんでいて、お兄さんに脇を下から掴まれて引き摺られていた。 僕はとりあえず大きな柱にもたれ掛かった。 すると一気に全身の力が抜けてズルズルと地面に座りこんでしまった。 これでよかったんだよね。 うん。 よかったんだよ。 僕はずっと握っていた拳を開いてみた。 すると掌には大量の汗が駅の明かりに照らされて光っていた。
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