痴漢

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周りの視線が僕に集まる。 僕はもう一度叫ぶ。 「この人痴漢です!!」 この時の僕は必至だった。 頭で考えるより体が動いていた。 こんなの初めてだ。 いつも自分の気持ちから逃げてたから。 自分に嘘をついてたから。 おじさんの顔を見ると顔が真っ青だった。 おじさんは焦った様子で、「は、離せぇ」 と叫んだけど後ろにいた若い茶髪のお兄さんに腕を掴まれて、 「俺も見てたぜおっさん。次降りるぞ。観念しやがれ」 と言われていた。 ぼーっとしていると周りから、 パチパチパチパチパチ と拍手が起こった。 中には、 「よくやった坊主!!」 と褒めてくれる人もいたりした。 後ろにいた若い茶髪のお兄さんは耳元で、 「俺も勇気出なかったのに先に言ってくれてありがとう。よくやったな」 と囁いてくれた。 僕の顔が熱くなっていくのがわかった。
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