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彼が、発泡酒が苦手だってことは知っている。
けれど、ひとり暮らしの私の部屋には節約のため発泡酒しか置いていない。
彼が前に来た時に置いていったビールが、1本だけ残っているけど。
チューハイを冷蔵庫に入れて、グラスを2つ持って戻る。
彼は大きなクッションを独り占めしてソファに座り、ぐったりといった様子でくつろいでいた。
一応準備しておいたコースターの上にグラスを乗せ、ビールのプルタブを開けた。
小気味いい音がすると、一気にビールが飲みたくなる。
「かんぱーい」
「おー」
カチン、と控えめな音をさせて、グラスを合わせる。
グッと一口、ビールを飲み込む。
「…っあー、おいしっ」
「…おー」
炭酸が喉を通ると、思わずオッサンくさい声が出る。
気にする様子もなく、彼も頷いた。
何を話すでもなく、ただ横でビールを飲んだ。
一緒にいるだけの空気が、心地良かった。
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