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山道を踏み外したのだろう、頭を打ったせいか、
少女の目は光を失っていた。
元に戻るまで、特に行くあてもないという
少女はおとろしと暮らすことになった。
少女は、おとろしを怖がらなかった。
名前を呼べば笑顔で応え、その手で
触れればふかふかだ、と喜んで。
そうしたうちにも、少女の目は少しずつ
光を取り戻していく。
もうすぐあなたの顔を見られるわ、と
毎晩少女は言い、それにそうだといいと答える、
ただそれだけのことがだんだんと苦痛に
なっていることに、やがておとろしは気付いた。
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