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とある秋の朝のことであった。
歳は二十代後半。
分厚いコートを羽織り
落ち着いた色合いのマフラーを巻くエヌ氏は、
通りに面したお気に入りのオープンカフェで
コーヒーを一杯飲むことが朝の習慣となっていた。
と言うのもエヌ氏は深夜コンピュータをいじることが趣味であり、
今日もまた、
その眠気を覚ます為に彼は友人のエフ氏と共にこの店に来ていた。
そして、いつも通りのコーヒーをウェイターに注文する。
「コナコーヒーを。
君は、どうする。
同じのでいいかい」
分厚い本を広げるエフ氏は、少し怪訝な表情を浮かべた。
彼は休日にも関わらず、さらっとスーツを着こなす好青年だ。
「前にも言っただろう。
私は酸味の強いものは好きだがコーヒーは飲めないんだ」
何度も繰り返したこの文句を言い終えたエフ氏は、
落ち着いた表情でウェイターにアールグレイを注文し、
分厚い本を1ページめくった。
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