時計

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私は、時計が、怖いのです。 あのカッチ…カッチという…規則正しくなり続ける針の音… 一度その音に、耳を集中させてしまうと、なかなか頭から離れず、しまいには、時計の音を聞くことしか、体ができなくなってしまうのです。 勿論、子供の頃から、そう、という訳ではなく、時計にまつわる、ある恐怖の体験をしたからです。 あの日は暑く、蝉が、ジワジワ、と鳴いていました。 私は、父の命日、ということで、墓参りの為に、実家に帰っていました。 実家は、かなり田舎の農家であり、家の裏には、たけのこが穫れる、山がたっており、庭には畑、また、田んぼもこの家は所有していました。 母は、もう70を過ぎる年ですが、未だに元気であり、痴呆になる心配は、まるで予想されることがないような人です。 毎年のこの日は、親戚にあたる、爺さんや、婆さんが黒い服を着、墓参りが終わると、集まって畳の部屋で、談笑などしているのです。 この日もそうで、畳の部屋では、母も含め、老人達が、世間話やお互いの、息子の自慢話を、言い合っていました。 私はそこに行くと、必ず、面倒な質問を、浴びせられることを知っていたので、一人、昔の自分の二階の部屋で、懐かしいレコードなどを手にとって、見ていました。(このときまだ昼前であり、私は、このあと母たちを、車で食堂に連れていかねばならなかったので、仕方無く、家に残っていました。) このとき私はふいにあくびをすると、自分は昨日、会社で残業をしていたので、あまり眠っていないことを思い出しました。
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