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「…ウッ…!」
私は、別世界に連れて行かれるのを必死に抵抗していました。
私はまだ、金縛りになったときにあう、あの頭の中が変な方向に向かう感覚を、最後まで許したことがないので、このまま行くとどうなるのか?という恐怖に襲われ始めました。
「……ウッ……クソ…!…」
私がもがき苦しんでいるとその時でした。
カチ…カチ…
と、あのキーンという音とは別に、静かに聞こえてくるのです。
私が、その音が時計の針の、音だと気付くのにそう時間はかかりませんでした。
「……!…」
私は、なんともしれない、嫌悪感にも似た、不安を感じました。
妙に、ハッキリと聞こえるのです。
まるで、その音だけ浮き出したように、私の耳に届いてくるのです。
カッチ…カッチ…カッチ…カッチ……
「………!」
私はなんとか体を動かそうと、この場から逃げ出そうと必死でした。
なぜなら、あの時計の音が、足音を立てるように、こちらに近づいてきたからです。
その時の気分は、例えば、親密な関係にある、家族などが突然、普段見せることのない、腹に抱えた感情、怒り、また殺意などを持って、私の枕元に、接近してくるかのようでした。
カッチ……カッチ…カッチ…カッチ…カッチ!…カッチ!…カッチ!…カッチ!
私はもう限界でした。
これから首を切り落とされる、ギロチン台に、仰向けで張り付けられているような気分でした。
そしてあの時計の音は、生の時間を刻一刻と、奪っていく……
カチリ!カチリ!
その音の大きさは信じられないほどで、まるで耳の中に時計でも入っているかのようでした。
とても、人では聞き分けられないような、音まで聞こえてくるのです。
時計の構造が解るようでした。
キキキ…カチリ…キン!
その音が鳴った時、確かに私はギロチンの縄が、ぶつりと切り落とされるのを、見ました。
ただ、私はギロチンの刃が、首に、到達するか、しないかの距離で、目を開けることが出来ました。
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