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「………」
ジワジワジワジワ…
上半身だけ起こすと、私は自分のワイシャツが、水でも被ったかのように、ぬっとりと、自分の体に、引っ付いていることに気が付きました。
「……!」
私は時計に焦点を合わせました。
なんでもない、時計でした。
丁度、昼の12時を指していました。
カッチ…カッチ…カッチ…カッチ…
私は階段を下りると、老人達の集まっている畳の部屋に行き、母に、「もうそろそろ、飯に行こう」と言いました。
母は了解し、老人達に呼びかけると、皆、私の、ファミリー用の、大型の車に歩みを始めました。
私はその夜、自分の家の、自分の部屋の時計を、デジタル式に変えました。
なぜなら、あの音を聞くのが恐いのです。
あの…規則正しく…それゆえ残酷に、容赦なく、人の時間を、奪っていく音を…
おかげで私は、家族から、趣味でもないのに、デジタル時計マニアだと、今も、思われているのです。
ー完。
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