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「いっつも迷惑かけてすいません、河原さん」
河原のアパートに着くと小宮が言った。
小宮からは学生の頃から相談を受けてきたため気にしていなかったが、軽い警察沙汰を起こし、保護者代わりに呼ばれたのにはさすがに驚いた。おかげで人生初、警察のお世話になってしまった。
「別に気にしてないが、どうした?金に困ってるのか?」
小宮は「まあ困ってるってほどじゃないですけど」と笑い、「大丈夫ですよ。お金のことでは迷惑かけません」とも言った。暗くて、表情はよく見えない。
「金のこと以外でも迷惑はかけないように」
「あ、確かに」
「まったく……無茶はするなよ」
ふふ、と小宮は笑う。「やっぱり、河原さんは優しい」
河原はそこで小宮と別れ、アパートの階段を上った。自分の安っぽい革靴と安っぽい階段が作る足音を聴きながら、思う。やっぱり大事だよな、金。
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