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売り物にならずに捨てられた、曲がったキュウリや二股の大根を、家の前を流れる川から拾い上げて食べるような極貧生活の中でも、川のことを『うちの専属スーパーマーケット』と呼び、『配達までしてくれる』『勘定もせんでよか』などと笑い飛ばしていた、とてつもなく明るいばあちゃんである。
この頃は、長男一家と同居していて、何の不自由もない暮らしのはずだが、健康の為と称して、相変わらずキツイ掃除婦の仕事を続けていた。
19歳の夏、傷心で佐賀に辿り着いた昭広が、早速、八百屋のアルバイトを辞めてしまったと話すと、ばあちゃんは、
『やめたんなら、仕方なか』
拍子抜けするほど、あっけらかんと言い放ち、カラカラと笑った。
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