始まりの出来事

5/6
前へ
/8ページ
次へ
    "…どーしよ…"     途方に暮れた陸は、とりあえず辺りを見渡した。 すると、クラブ帰りであろう友人を数人見つけた。   幸運だ、これで助けて貰える。 疑いもせずに友人に駆け寄り、一鳴きした。     "助けてくれ~!"     発する事が出来るのは「にゃぁ」という鳴き声だけだったが、それでも友人の一人はこちらに気付いて足を止めた。     「ん? 汚いネコだなぁ」     しかし友人はそう言っただけで、また他の友人と歩き始めてしまった。     "…ぇ? ちょ、ちょっと…!"     当たり前に助けてくれると思っていた陸には、友人のその態度は衝撃的だった。     "俺だって! おぃっ!!"     追い掛けてニャーニャーと叫んでみるが、今度は他の友人にまでも、 「何、この汚いネコ」 と言われてしまった。     「そーいやさぁ、聞いた? 陸の話。」   "俺…?"     友人達が話題にしていたのは、ついさっき事故に会った陸の話だった。     「なんか、さっきそこで事故ったらしいぞ。 事故見てたツレから聞いたんだけど、怪我は大したことないらしい。 でも意識は戻ってねぇらしいよ。」   「うゎ、当たり所悪かったんじゃねぇ? こえー。」     そう言いながらも冗談っぽく笑いながら話している友人の言葉が、信じられなかった。    
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加