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天を衝くかのごとく、勢いを増していく赤い火。
それを鎮めようとするかのように降ってくる白銀の雪。
それら二つがあいまってひどく淡い、幻想的で綺麗な景色を作り上げていた。
そのすぐ近くに『ぼく』と、妙齢の着物を着た女性がいた。その横顔は黒みがかってよくは見えない。でも、そのシルエットだけでぼくの心がきゅっと締めつけられた。おそらく、この女性はぼくと親しい――あるいは、親しかった人なのだろう。
その人はこちらに目を向けず、今なお燃え盛る炎だけを見つめて、ただ立っていた。
何秒か何分かわからないが、やがてその人は長い髪をなびかせこちらに顔を向けてきた。それでもやはり、顔は黒みがかってよく見えなかった。それなのに、ぼくの胸にせりあがってきたのは愛おしさと、どうしようもない悲しみだった。
「ごめんなさいね、あなたに罪はないの……そして、こんなことをしたあの人たちも悪くはないの。あたしたちを取り巻くすべてが……積み重ねてきた歴史が、あたしを――あたしたちを赦さなかったの」
はかなげな微笑を浮かべたように感じた。そしてひどくかなしげな声で、こう言うのだ。
「それでも、あたしはあらがうわ。でも、それはあたしのエゴだからあなたを巻き込むわけにはいかない。赦してとは言わないし思いもしない、それどころか恨んでくれたってかまわないわ」
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