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「…この中から杪を探せって…おいおい、新手のイジメだぞ」
まず俺の目の前に映ったのは広大な庭園だった。
ここからでも門は見えるが、それでも米粒サイズにしか見えない。
そんな門に続く道の両脇は綺麗な薔薇のアーチが延々と続いてる。
「…取り敢えずこのアーチを潜ってみるか」
俺は薔薇のアーチに向かって歩き出す。すでに千崎さんは消えていた。
暫く歩くと広場みたいな場所に到着する。
そこには雄大な噴水があり、その周りには色とりどりのパンジーが咲いていた。
暫く見渡していると杪を発見する。何故か薔薇の枝を切っていた。
だがそんな姿も美しく、俺はつい看取れてしまう。
ふと、杪が俺に気付いたのか視線をこちらに向けてきた。
「あら推理様、お目覚めでしょうか」
そして優雅に俺に向かって歩いてくる。正しくお嬢様って感じだ。
「…正直に言わせてもらうと目覚めは最悪だがな」
「…申し訳ございません、わたくしも少々取り乱しておりまして…」
俺が少し棘を含んだ声で言うと杪が神妙に頭を下げてきた。
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