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鬱蒼と広がる深緑の森の中、茶色基調の一軒家がたたずんでいた。
森の中でイレギュラーに見えそうだが、それはそこにあるのが当然かのように、とても自然に見えた。
「ふぅ……」
その家の前まで着き、青年は一息吐く。
森の中は蒸し暑く、青年の透き通るような茶色い髪を汗でべったりとさせていた。
「何してる」
青年が声のした方を振り向くと、紺青の長い髪を腰まで垂らした少女がむすっとした表情で立っていた。
「…………」
何も考えていないような虚空な瞳でずっと見つめていると、少女は大きく溜息を吐き、「聞こえなかったのか?」と凄みのきいた高圧的な声で言ってきた。
しかし、青年はたじろぐことはない。
逆に笑みを浮かべていた。
「……聞こえなかったのか?」
さっきよりも強い口調。
少し怒ってるように感じる。
「君を奴隷にしたい」
青年は笑顔から真剣な表情に変え、この言葉を送っていた。
この言葉に少女は紅い目が見開かれる。
そして、頭を抱えて「すまない。よく聞こえなかった」と言うが
「君を奴隷にしたい」
青年はまた同じことを言う。
すると少女は頭を抱えたまま唸っていた。
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