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「………」
少年の叫びは虚しくも
闇に響くだけで
特別何も起こらなかった
少年は諦めずに、
もう一度息を吸い込み
一気に吐き出そうとする
「ぐぉめんく…」
少年が言い切る前に
ギィッ、と錆びれた音を発て
大門がゆっくりと開き始めた
何だか不完全燃焼に
不満を持った少年であったが
気を取り直し屋敷へと
歩みを進めていった
屋敷の中はかなり広く、
加えて豪華な装飾が並んでいた
鎧に絵画、彫刻は
今までに見たことがないような
幻想的な模様で彩られ、
まるで別世界に迷い込んだかと
錯覚させるには充分であった
少年は辺りを見渡しながら
ある部屋の前に辿り着いた
他の部屋に比べ
二回り程扉が大きく、
決定的な違いを挙げると
この扉にだけハートを
真っ二つに割った様な
シンボルが掲げられている
一体どんな意味があるのかは
少年に分かるハズもないが
目を奪われる程に色鮮やかだ
真っ赤なハートの上に
王冠の様なものがあり、
綺麗に真ん中で割れている
少年はシンボルに
目を止めながらも
扉を数回ノックした
コンコン、と
渇いた音が響いた後に
透き通る様な綺麗な女の声が
少年の耳へと入っていった
「…入れ」
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