8618人が本棚に入れています
本棚に追加
すぐ傍に、人の気配を感じた。
彼女が戻って来たようだ。
テーブルの上に並んでいたコースターの上に、グラスを乗せる。
コースターとか、普通あんまり置いてないよな、と思いながらその動きを見守った。
俺より小さい手が、器用にビールのプルタブを開ける。
小気味いい音。
そして、グラスに注がれる泡。
むくりと起き上がり、それを手に取った。
笑顔のままの彼女も同じように手に取って、こっちを向いた。
「かんぱーい」
「おー」
カチン、と控えめな音をさせて、グラスを合わせた。
そのまま、ビールを口へ運ぶ。
「…っあー、おいしっ」
「…おー」
どう見ても女なのに、絞り出した声はオッサンみたいだと思う。
とはいえ、その感想には同意。
俺も一口目のあの味は、やっぱり好きだ。
何を話すでもなく、ただ横でビールを飲んでいる。
そんな何でもない時間を一緒に過ごせることがとても嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!