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「ふぅ…」 その男はもう何枚目かわからなくなってしまった書類の束をチェックし終え、眼鏡を外し目頭をおさえ一息ついた。 「もう朝か…」 窓から見える高層ビルの合間から 雲に隠れた朝日が出るのを目を細めて見つめる。 ピーン シュボッ 心地好い高音を響かせながら 愛用のデュポンでタバコに火をつけた。 もう何度こうして朝を迎えただろうか、と考えながら自嘲気味に小さく笑った。 美しいアンティークの灰皿には 似つかわしくない程積もった吸い殻達の隙間に タバコを乱暴に押し付け、帰り支度を始める。 デスクのまわりを綺麗に整頓し、重い腰を上げ男は部屋を後にした。
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