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「…取りあえず、横になった方が良いよ。」
「………。」
途中から、ちょっとずつ気付いていた。
「明日、朝からバイトなんじゃないの?」
「大丈夫だよ。」
大丈夫って、何が?
何もしないって事?
「そっか…。」
聞きたいけど、聞けなかった。
何もしないかどうかなんて、聞いた所で意味がない。
そんな質問は、自分の中で判断すべき事だ。
ここまでの道のりで、何度だって引き返すチャンスはあった。
私を抱き抱えてくれる腕の温もりを振り払えずに、ここまでのこのこついて来て、今更、何を戸惑っているんだろう。
「行こうか。」
翔平は、有無を言わさない言い方で、ネオンの眩しい店の中へ導く。
「………うん。」
上っ面の優しさが剥がれる落ちて、本当の姿が顔を出す。
アルコールが私の思考回路を歪ませる。
独りになりたくないの。抱きしめられていたいの。必要とされていたいの。
翔平に手を引かれて歩く、ラブホテルのフロントまでの道のりは、とてつもなく長い距離に思えた。
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