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「一体あいつは何だったんだ」
今日あったことを振り返りながら、ユウヤは夕暮れの商店街を歩く。
『黄川ユウヤ君だよね?』
『そうだが』
『えっとね、ユウヤ君が、人生戦隊ライフマンに選ばれたみたいなの! やったね!! ヒーローだよ!! これからよろしくね!!!!』
『・・・・・・は?』
「・・・・・・まぁいい。久々に日川屋に行くとするか」
ユウヤの言う日川屋は老夫婦が切り盛りする寂れた弁当屋である。
時代に置いていかれた風体をなしているが、味に関してはどこぞのレストランにも引けをとらない。
そしてユウヤは、久々とは言いつつも、つい一週間前に買って帰ったばかりである。
「おいばあさん。いつものエビフライ弁当一つくれ」
「おやユウヤ君。久々だねぇ」
ユウヤの顔を見た老婆はニコッと笑う。
「今日じいさんはどうした?」
「じいさんかい?部屋で寝てるよ」
老婆の言葉に眉がぴくつくユウヤ。
「最近ご飯事件って流行っているだろ? うちにもその皺寄せがきちまってねぇ、つい先週からまともに弁当作れてないんだよ・・・」
頼りなさげに話す老婆の様子に、ユウヤは黙ることしかできなかった。
「それ以来ふさぎ込んで寝てばっかでねぇ・・・ もともとギリギリでやってたもんだから、長引くようじゃ店畳むことも考えんといかんかもしれないねぇ・・・」
話が終わった後、最後の一つと言われたエビフライ弁当をユウヤは受け取った。
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