百々目鬼

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 鳥が三歩歩けば物事を忘れるように、皐月は三日で物事を忘れる。  夕方、夕焼けの綺麗な時間に、皐月は肉屋の揚げたてコロッケに目を奪われていた。  今日の晩ご飯はコロッケに決まりぃ!と心の中で叫んだその時、  ちゃりーん  小銭の落ちる音がしたのだ。  ふと足元を見ると、確かに一枚の硬貨がくるくる回っている。  皐月はコロッケの事を忘れ、しゃがみ込んでくるくる回る硬貨を、犬のように首を傾げてみていた。  やがて回転が弱まり、それが五円玉である事が判った。 「誰のだろ」  回転も止まり静かに転がっている五円玉を拾い上げた。  ぞくり、と体が粟立つ。  皐月は本能的に周りを見渡すが何も見あたらず、寒気の主はこの五円玉だと気付くのに時間はかからなかった。  と、途端に体中に痒みが襲い、袖から少し覗いた手首に薄らと切り傷のようなものが浮き出てきた。  次の瞬間、その切れ目はぐにょっと開き、「目」となった。 皐月は晩飯も忘れ走り出していた。
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