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「これは…面白いけど困るなぁ」
「入れませんねぇ…もふもふー」
皐月は見えない綿に体重を預けて楽しんでいる。
目に見えていない物に完全に体を預けることを恐ろしいと思わないのか。
どこまで横移動しても綿は進路を阻み、樹までの距離は運動場の端から端までくらいあるだろうか。
未だもふもふやっている皐月、その手からぽろっと紙風船が落ち、見えない綿にぽむっと落ちた。
ぱんっ!!
紙風船が高い音を立てて割れた。
その音にびっくりしている間もなく、割れた紙風船からさらに大きな音を響かせた。
巨大なホイッスルを鳴らしているようなその音は、周囲の妖怪達も木から落ちるほどだ。
「なっ!?皐月、止めろ!うるさくてかなわん!!」
「ぇえ!?ど、どうやって…ぅわ!!」
音にかき消されるかのように綿の壁が消滅し、乗っかっていた皐月がどさっと地面に倒れ込んだ。
それと同時に音も止み、大樹への道が開かれた。
樹の葉は、風に揺られて虹色に輝いた。
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