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打ちつけた場所をさすりながら樹の根元へと近づいていく。
窪んだ場所に、九尾の狐の着物が見えた。
「あー…確かにいるねぇ」
「さっきの音で気づかなかったのかな」
九尾の狐は眠っているらしく、まったく柾達の接近に反応を返さない。
柾達程度に殺されるとは思っていないが故の無関心なのだろうか。
「皐月はそこにいなさい。僕だけで大丈夫だから。もし危なさそうだったら…近くの妖怪を全部集めてでも逃げるんだよ」
「センセは」
「逃げるんだよ、いいね」
皐月をおいて、柾は九尾の狐のもとへと歩いていく。
ちらりと皐月がついてきていないかを気にしつつ、とてつもなく太い根っこに隠れて眠る九尾の狐の顔をのぞき込んだ。
「…よぉ、こんなとこにいたのか」
ぴくりと反応し、九尾の狐はその黒目がちの大きな目を開く。
ぽろりとこぼれる涙に柾は目を細める。
「柾様は意地悪です」
「そういう性分だから仕方ない」
根っこの上に座り、妖怪採集セットを九尾の狐に渡してしまった。
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