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「僕としては、君みたいな捕獲するのにとても面倒な部類の妖怪とはやり合いたくないのだよ。ごらんのとおり体力もないし、疲れるのは大嫌いだ」
膝におかれた鞄を見つめ、九尾の狐は眉をハの字にする。
己の武器を敵に渡すなんて、この封じはなんと馬鹿なのだろうと思いながら、肩紐を持ち上げするっと落とした。
「それでは、どうやってわらわを調伏するおつもりですの」
「調伏…君は自分の行いを『悪行』だと思っているのかい」
質問に質問で返され、九尾の狐は顔を上げる。
柾は九尾の狐を見てはおらず、ぽけーっと大樹の葉を眺めていた。
「僕はねぇ、君の考えに悪いことなんてなーんにもないと思うんだよねぇ」
九尾の狐が望む生活は、九尾の狐が自分らしく生きるための手段でしかない。
悪行と決めつけるのは他者であり、自分には関係のない意見である。
「君自身が悪いと思うなら辞めるべきだけど…純粋にやりたいと思うからやるだけなんでしょ?」
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