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暗くなり、人通りの減った商店街。
柾は興味深げに見回しながら歩いていた。
皐月は晩飯を思い出し、百々目鬼の事も忘れ買い物モードに入った。
魚屋で鮭の良い所を注文した時、皐月は嫌な視線を感じ振り返った。
「居るんだね?」
柾の短い質問に、皐月は頷く。
「さっくり買い物済ませて帰ろっか」
にっこりほほえむ柾の声に少しは落ち着いたものの、じっとりとした視線は変わらずにあった。
鮭を受け取り、いつもの道を帰ろうとする皐月の手を引いて、柾は人通りの少ない道を選んで歩き始めた。
「来てる?」
「うん」
「よーし、来い来い来い」
柾は悪戯っ子のような笑顔、楽しんでる。
やがて、人気のない公園につくと、ぴたりと足を止めた。
背後の気配も同じく止まる。
「さて、うちの子がお世話になりましたようで」
くるりと柾は振り返り、気配へと語りかける。
そこには、皐月の記憶のままのあの男がいた。
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