百々目鬼

13/16
前へ
/1120ページ
次へ
 暗くなり、人通りの減った商店街。  柾は興味深げに見回しながら歩いていた。  皐月は晩飯を思い出し、百々目鬼の事も忘れ買い物モードに入った。  魚屋で鮭の良い所を注文した時、皐月は嫌な視線を感じ振り返った。 「居るんだね?」  柾の短い質問に、皐月は頷く。 「さっくり買い物済ませて帰ろっか」  にっこりほほえむ柾の声に少しは落ち着いたものの、じっとりとした視線は変わらずにあった。  鮭を受け取り、いつもの道を帰ろうとする皐月の手を引いて、柾は人通りの少ない道を選んで歩き始めた。 「来てる?」 「うん」 「よーし、来い来い来い」  柾は悪戯っ子のような笑顔、楽しんでる。  やがて、人気のない公園につくと、ぴたりと足を止めた。  背後の気配も同じく止まる。 「さて、うちの子がお世話になりましたようで」  くるりと柾は振り返り、気配へと語りかける。  そこには、皐月の記憶のままのあの男がいた。
/1120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1330人が本棚に入れています
本棚に追加