百々目鬼

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「なんで目がないんだよ…」  ぶつぶつと聞き取りにくい声で男は呟く。  その腕や顔には無数の目、ランダムに瞬きをするそれらは薄らと発光し、皐月はイルミネーションみたいだとのんびり思った。 「そりゃだって、うちの子は泥棒しないですから」  良い子なんで、と柾はにっこり返す。  後ろ手に鞄を皐月へと渡し、紙と筆を出すように命じた。 「ねぇ、それってどうなってるんだい?もしかして頭皮にも目がぎっしり?痒くない?」 「そいつをよこせよ、てめぇもこうなりたいかぁ!」  男が叫ぶ、同時に全ての目がかっと見開いた。 「まったく、人の話を聞かないなんて悪い子だねぇ…この子はだーめ、あげれません」  にこにこ笑顔は絶やさず、皐月から紙と筆を受け取ると、さらさらと凄いスピードで絵を描き始めた。  そんな柾に向かい、男は猛スピードで突進してくる。  既に人間の形相ではなかった。 「うわっちょっとセンセ!お絵かきしてる場合じゃ…!!」  もう少しで衝突というところで、柾は紙を男の喉元…一際輝く目へと押し当てた。 「鬼さんつーかまーえた」  次の瞬間、男は吹っ飛んでいた。
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