百々目鬼

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 次の日の朝、優雅な癒し時間を楽しんでいた柾の元に、いつも通りの騒がしい足音が近づいてきた。 「センセ、大変!」 「スリの常習犯自首」 「うえー何で知ってんのぉ?」  柾は皐月を見ずに、朝刊をひらひらさせた。  自宅に数百という盗んだ財布を保管していたスリの常習犯が自首してきたという記事だ。 「この人はね、段々百々目鬼に乗っ取られて、止めたくても止めれない無間地獄に陥っていたのだよ」  きっと、苦しかったろうなぁ…と柾は呟いた。 「百々目鬼が消えたから、良い人に戻ったんだね?」 「スリは元々癖だったんだろうけどね」  もう大丈夫、と柾は笑った。 「それより、こんなとこにいて良いのかね?皐月クン」  柾は壁掛け時計を指差し、紅茶を一口啜った。  行って来まーす!と勢い良く、皐月は飛び出していった。  いつも通りの朝である。  柾はコレクションに、百々目鬼を加えた。 ―百々目鬼    保管完了―
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