百々目鬼

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「ははっ…また増えた」  鏡に背中を映し、男は暗い笑みを浮かべながら新たに増えた其れをみる。  彼の背中には…否、体全体には「目」が貼り付いている。  それらは一つ一つが意識を持っているかのように瞬きをし、「目」を閉じた状態であれば何等普通の皮膚と変わりない状態に見えた。  男は鏡に張り付けた紙切れに書かれた正の字へ線を一本継ぎ足す。  初めはとても驚いたが、今ではコイツが増えるのを見る事が一番楽しみとなっている。  この「目」からは視覚的情報は伝わってこない、自分の意志で動かす事も不能。  それでも、何も言わずとも「目」達は閉じていてほしい時は閉じていてくれる。  しかし、一体どれだけ増えていくのだろうか…そろそろ何もない場所を探す方が難しくなりそうな気がする。  …否、そんな事、もうどうでも良いか。 「此処まできたら、一つ増えようが二つ増えようが同じか…」  へへっ…と口元を歪ませ、鏡に映る「目」達と一緒に…哂った。
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