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一週間ばかり過ぎた頃、小火騒ぎが連続して起こるようになった。
放火犯が居るのだろう…しかし怪しい者は目撃されていない…柾に疑いがかかる程に。
小火騒ぎがあった次の日は必ず、あの少年が悲しそうな顔で家を出るのだ。
まさかあの子な訳はなさそうだしなと思いながら、背を丸めた後ろ姿を眺めた。
それにしても…何故だろう、あの子は妙に陰が濃い。
がっくり落とした肩が暗く見せているのかとも思うが、それだけであんなにも…?
ちらりと少年は振り向く。
柾は手を振った。
すると、少年は真っ青な顔をし走り去っていった。
きょとんと、どうしようもない手を宙に浮かせたまま…走り去る姿を見送った。
仕方なしに屋敷へ戻る。
玄関に入ったその瞬間、熱気を帯びた風が吹いた気がした。
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