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「目玉…いっぱい?」
「うん、今日の帰りにー…」
帰り道、いつもの商店街で夕飯の買い物をしていると、前から一人男が歩いてくる。
男は黒いタンクトップにだぼっとしたジーンズ、汚れたスニーカーを履いてよろよろしている。
途中、横を通り過ぎようとした老婆にぶつかり、派手に転ばせてしまった。
大慌てで手を差し出し立たせた男は、暫く老婆を気遣い、やがてそれぞれ歩き始めた。
皐月はなんとなしに男を見ていたが、気づいた男にギロリと睨まれる。
と、その時…目が…腕や顔や首筋、露出した肌全体、沢山の目に睨まれた。
ほんの一瞬の出来事だった。
皐月は呆然と、去っていく男の後ろ姿を見送った。
タイムセールの呼びかけ響く肉屋の、揚げたてコロッケを買っている間の話だった。
「それは…妙なのに出会ったもんだねぇ」
ズズズと冷めたジャスミンティを啜りつつ、柾はほのぼのと感想を言う。
「ソレはね、『百々目鬼』だよ」
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