百々目鬼

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「とーどーめーきぃ?」  皐月はきょとーんと首を傾げる。  初めて聞く単語だった。 「うん、百々目鬼。おばあさん可哀想に、今頃財布がないって大慌てだろなぁ」  軽い調子で言いながら丸いレンズの眼鏡をかけ、小学生が見るような「妖怪百科」と書かれた本を取り出した。  ページをめくり皐月へ差し出すとにっこり笑った。 「これだよ、こーれ」 「センセ、どうでも良いけど何でこんな本持ってんの…」  ぽそり言いながら受け取った本には、頭に何枚も布を被って顔を隠し、裾が地面について大きく広がった着物を着た人物が描かれている。  その厚着した人物は袖を肩までめくり上げ、腕をさらしていた。  その腕には、沢山の目がついていた。 「ソレはね、スリを得意とした女性に憑いた妖怪なんだよ。何度もスリを繰り返した末、体中に目玉が浮かび上がったんだね」 「でもあの人男でしたよー?」 「性別はどっちでも良いんだ、この妖怪の本体は「目」だからね」
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