百々目鬼

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 お金の精が化けてとり憑いたのが「百々目鬼」なんだよと柾は言った。  この、体中に現れる「目」は昔の硬貨、銭にあいた穴の鳥目を表しているのだそうだ。  その穴は雁の目に似ている事から雁目とも呼ばれ、それが百も二百もくっついたような姿になる事から百々目なのだそうだ。  と、柾の説明を分かったような分かっていないような返事をし、あれが百々目鬼なのかぁ…とチョコサンドクッキーに食いついた。 「で、それに睨まれたんだよねぇ…本当に君は、色々と持ってきてくれるねぇ」 「別にわざわざ見つけてくるわけじゃないもーん」  クッキーを殆ど一人で食いきった皐月は、ぷうっと頬を膨らませて反論する。  クスクスと笑いながら、柾は空になった急須に湯を注いだ。 「久々に、面白いものが描けそうだね」  あまり色の出ていない茶を湯呑みに注ぎ、コレクションを見渡した。
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