1330人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか、まずいのか…」
真っ暗な部屋の中、男は鏡越しに「目」達へ呟いた。
「目」達はただ瞬きをするだけ、しかし男にはしっかりと「目」達の声が聞こえているようだった。
「俺もあのガキは厭な感じがしてたんだ」
暗闇の中薄らと発光している「目」は、蛍が全身にとまっているかのように見える。
足下には夕方の戦利品、使い古したがま口の財布が、一度も口を開けられないまま落ちている。
それだけではない。
床には一面、中身の入ったままの財布が無造作に散らばっている。
「さて、どうしてやるのが良いと思う?」
一歩鏡へ近付く。
喉元にじわじと、一際光輝く「目」が現れた。
―仲間にしちゃえば良いと思うよ―
男はニヤリと笑い、鏡に貼り付けた紙へ新たに一本線を追加した。
最初のコメントを投稿しよう!