百々目鬼

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「そうか、まずいのか…」  真っ暗な部屋の中、男は鏡越しに「目」達へ呟いた。  「目」達はただ瞬きをするだけ、しかし男にはしっかりと「目」達の声が聞こえているようだった。 「俺もあのガキは厭な感じがしてたんだ」  暗闇の中薄らと発光している「目」は、蛍が全身にとまっているかのように見える。  足下には夕方の戦利品、使い古したがま口の財布が、一度も口を開けられないまま落ちている。  それだけではない。  床には一面、中身の入ったままの財布が無造作に散らばっている。 「さて、どうしてやるのが良いと思う?」  一歩鏡へ近付く。  喉元にじわじと、一際光輝く「目」が現れた。 ―仲間にしちゃえば良いと思うよ―  男はニヤリと笑い、鏡に貼り付けた紙へ新たに一本線を追加した。
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