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少年は森の茂った山の中を歩いていた。
そしてその全身は青アザだらけだ。
事故による怪我ではない。
その少年はある名門剣術を伝える家に生まれた。
その家は代々、男に剣を伝え1000年以上の時を歩んできた。
その少年は正室の子、長男としてこの世に生を受けたのだが、
たぐい稀なるその格闘センスの高さは常人のそれをはるかに超えており、
13歳になった今では並の大人など歯牙にもかけぬほどの剣術を身に付けてしまっていた。
少年の母親は生まれつき体が弱く、数年前に他界してしまった。
それと同時に継承者の地位が絶望的な次男と、継承者の地位を諦めきれぬその母親に『剣鬼』と呼ばれ、理不尽な虐待を一身に受ける羽目になってしまったのである。
もちろんそれを撃退するのは少年にとっては造作もない事だ。
常に木刀も帯刀している。実にたやすい。
しかし少年はその虐待をあえて受けつづけた。
その少年は理由もなく剣を振るう事を何より嫌っていたのだ。
戦う事の真の意味を、よく理解していた。
その少年の名は『御剣 剣十郎』と言った。
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