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見渡すと、広いグランドにどこまでも続きそうな青い空、そんな青に筆を下ろしたようなホウキ雲。
グランドの片隅には、けん銃射撃場や送電線のような10m程のレンジャー訓練塔がそびえ立っている。
顔に降り注ぐ色鮮やかな日差し。
頬をなでる一つのそよ風。
上空からはセスナ機がプロペラの音を響かせていた。
一度、目を閉じるとそのプロペラの風切音は次第にかき消され、静寂が俺を包みこむ。
その静寂が身体へ滲み込むと、穏やかに開け放たれた瞳は光をとらえた。
まばゆい光の中、俺はグランドの中央から100m先に見える彼を目指し、走りはじめる。
蹴り出すたび、足の裏から伝わってくる砂の巻き上がる感触。
耳をかすめる風の音。
その研ぎ澄まされた感覚の中で、10秒にも満たない時間はとても長く感じられた――
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