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女は良き母に見えた。
そのことに夫はたいへん気を良くし、女の元へと戻ってきたのだ。
この子をきちんと育てれば夫はどこへも行かない。
女は懸命に子育てをした。
異変はそうこうしているうちに現れる。
朝起きて朝食を作ろうとすると、買い置きしていた食材がごっそり無くなっていたのだ。
泥棒だろうか、しかし金品はなくなっていない。
なにより戸締まりはしっかりしていて、こじ開けられた形跡もないのだ。
それでも、食料庫には空になった容器しか見あたらない。
夫に異変を訴えるも、鼠の仕業だろうと言って取り合って貰えず、女は朝食抜きで荒れた食料庫を片づけた。
嗚呼、子供が泣いている。
幸い粉ミルクは無事だった。
すぐさまミルクを準備し、赤子にミルクを飲ませて寝かしつけた。
赤子の安らかな寝顔、女は無意識に舌打ちをする。
ちっ…。
赤子が眠っている間に女は買い物へ行った。
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