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かしゃん、ナイフが落ちる音がしたケド、抜いたの気づかなかったなー。
アリスは鞄を探って、とても大きなナイフ…これは肉切りナイフかなぁ…あんな可愛い鞄によく入ったものだと思う。
キュッと布巾で刃を一拭きすると、キラリ光を反射させながら逆手に返し、熱を帯びてジンジンする傷口へと真っ直ぐ突き立てた。
声も出ない。
貫き通すほどの力はなかったようで、刃先が中途半端に止まり肉を引っかく。
「勿体ないわ。この液体、小瓶に入れてあとで飲んでしまいたいのに!」
傷からどくどくと溢れるボクの赤色、アリスのドレスを汚しちゃったみたいだ。
「ァ…リス、随分のんびりなお食事なんだネ」
いっそ早く終わらせてくれたらいいのに。
アリスは口元についた真っ赤なジャムのような斑点を舐めとり、うっとりした目で笑う。
「だってアタシ、好きな物は最後にとっておく方なの。だからー…殺してしまったら、一番美味しい物がダメになっちゃうでしょ?」
そういいながら、アリスはボクの腹からズルリと、ぬめっと光る腸を引きずり出した。
痛さより、引き抜かれていく奇妙な感覚に意識が持っていかれる。
あぁ、ボクの一部がなくなっちゃったようだ。
「今日はこれだけ」
パチンと高い音を薄れる意識の遠くできいた気がする。
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