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「――」
「、……何か言ったか?」
隣で肩を並べて歩く彼女に、俺は微笑みながら訊いた。
すると、彼女はムスッとした表情をして、
「――いじわる」
と呟くように言って、ぷいと顔を背けた。
「ははっ、ごめんごめん。
けど、いじわるなんかじゃないよ。ボソボソと小さい声だから、よく聞き取れないんだ」
「……それが、いじわるだと言ってるんです」
一度はこっちを見たものの、また顔を背けた。
俺は、やれやれと肩をすくめ、春風になびく栗色の髪をそっと撫でてやった。
「――琉(リュウ)……?」
目を丸くして、彼女は立ち止まって俺を見た。
その顔は桜色に染まっているが、表情は柔らかな笑顔に包まれている。
それを見て、俺は思わず言った。
「――お前……それでも大人か?」
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